水虫について

皆さんは自分が「水虫になってしまったかも…」と思った時、どうされますか?

 (a) こっそりと薬局で市販薬を購入する。
 (b) ひたすら足をゴシゴシと洗う。
 (c) 恥ずかしいので誰にも相談できず、じっと我慢する。
 (d) お酢に足を浸けて水虫菌をやっつける。
 (e) 「どうせ治らない」と、あきらめる。
 (g) 皮膚科で診てもらう。

 

上の(a)~(g)の中で、正しい行動はどれでしょうか。このページを読んでいただければ、その答がわかります。

水虫ってどんな病気?

水虫は、正式には足白癬(あしはくせん)という病気です。白癬菌(右図)というカビの一種が、皮膚の一番外側にある角質層に入り込んで繁殖することによって起こります。

カビは高温多湿の環境で活発に繁殖しますので、水虫は夏になると悪化し、冬には症状が治まる傾向があります。ただし、靴の中は冬でも暖かく湿度が高い状態になりますので、長時間靴を履く生活の人では冬でも症状が悪化してくる場合があります。

水虫の症状は?

水虫とひとことで言っても症状は様々です。おもに次の三つのタイプに分けられます。

趾間型(ジクジク水虫)

指の股の皮膚がカサカサと剥けてきたり、赤くなってきたり、ひび割れを生じたりしてくるタイプです。患部からリンパ液がしみ出てきてジクジクとした状態になります。痒みが強いのが特徴です。このタイプは、二次的な細菌感染や、塗り薬によるかぶれを生じやすい傾向があります。

夏になると症状が現われ、冬には一見治ったような状態になります。(が、治っているわけではありません。)

小水疱型(ボツボツ水虫)

足の裏や側面に、たくさんの小さな水ぶくれができてかゆみを伴います。水疱が破れてカサカサと皮が剥けた状態も見られます。

このタイプも夏になると症状が現われ、冬には症状が治まる傾向があります。

角質増殖型(カサカサ水虫)

足の裏全体の皮膚が分厚くなって、かかとの部分ではひび割れを生じることもあります。夏場よりも、空気が乾燥する冬の方が、ひび割れなどの症状が強く現われます。通常、かゆみは伴ないません。爪白癬(爪の水虫)を合併することが多いタイプです。

角質層が分厚く肥厚しているため塗り薬の吸収が悪く、治療に時間がかかります。飲み薬で治療することもあります。

水虫を放置すると…

夏に水虫の症状が現れていても、冬になるとおさまってしまうこともがあります。しかし、治療していない状態では、冬でも足の皮膚に水虫菌は(夏に比べると数は減っていても)残っているので、次の夏になるとまた症状が出てきます。そのようなことを繰り返すうちに、だんだんと症状が重くなって、水虫は治りにくくなります。

さらに、たかが水虫と思って放置していると、いろいろな合併症を生じてくる危険性があります。代表的な合併症を以下に示します。

爪白癬(爪の水虫)

爪は、皮膚の角質が硬く分厚く変化したものです。足白癬を放置していると、白癬菌が爪にも感染を起こし、爪白癬を生じます。

硬い爪の中までは塗り薬が十分浸透しないので、水虫を塗り薬で治療しても爪の中に白癬菌が残ってしまい、塗り薬を止めるとまた爪から皮膚に菌が出てきて水虫の症状を繰り返します。

また、爪白癬からは常に白癬菌が撒き散らされてしまうので、家族内で水虫の感染源にもなります。

そのようなことから、爪白癬になる前に水虫の治療は行うべきです。もしも爪白癬になってしまったら、飲み薬を用いた治療を行います。

二次細菌感染

水虫になるとその部分の皮膚のバリヤーが弱くなるので、二次的な細菌感染を生じやすくなります。趾間型の水虫によく見られる合併症です。

細菌感染を生じると、指の股の部分のジクジクとした滲出液の量が増え、足の甲からスネにかけて赤く腫れて痛みを伴うようになります。ひどくなると脚の付け根のリンパ腺が腫れたり、熱が出て体がだるくなったりします(このような状態を、「蜂窩織炎」と呼びます)。

二次細菌感染を生じた場合には、水虫の治療よりも細菌感染の治療を優先します。できるだけ脚の安静を保ちながら、抗生物質の点滴または内服を行います。重症の場合には入院による治療が必要なこともあります。糖尿病など基礎疾患のある方は重症化しやすいので、特にこうなる前に水虫を治しておくべきです。

白癬疹

白癬菌に対するアレルギー反応で、菌が存在しない部位に発疹を生じる場合があり、これを白癬疹といいます。足白癬が悪化した時に、手にたくさんの水疱が現れる症状はよく見られますが、ひどい場合には全身に発疹が現われることもあります。
白癬疹はもとの水虫の治療を行うと治ってしまうこともありますが、症状が強い時にはアレルギー反応を抑える副腎皮質ホルモン(ステロイド)の飲み薬や塗り薬を用います。

正しい治療は、正しい診断から

そもそも診断が大事!

「足がかゆい」 ≠ 水虫

 

水虫薬のTVコマーシャルが影響しているのか、「足がかゆい」 = 水虫と思われている方が多いようです。しかし、足白癬の症状ににはいろいろなタイプがあり、中にはかゆみを伴わないものもあります。また、小さな水疱ができたり、指の股の部分の皮膚がカサカサと剥けた状態になったり、足白癬の症状と似た症状でも患部に白癬菌が存在しないまったく別の病気(→水虫と間違われやすい病気)もあります。このような病気に水虫の治療薬を使用しても症状は改善しないどころか、むしろ悪化してしまいます。

水虫の治療で大事なことは、そもそもその症状が本当に水虫なのかどうかということです。それを確認するために、皮膚科では患部の皮膚の角質を少量採取してその中に白癬菌が存在するかどうか顕微鏡で検査します。水虫が疑われる症状で、なおかつ白癬菌の存在が確認できた場合に「足白癬」という診断を下し、水虫としての治療を開始します。

ところが水虫の治療薬はドラッグストアに行けば簡単に購入することができるので、「足がかゆい」というだけで水虫薬を購入して使用される方が多いようです。しばらく薬を使用してみても症状が良くならない、あるいは悪化したということで皮膚科を受診されるのですが、実はこの事が水虫の治療を遠回りにしています。

水虫薬を使用したけれども症状が改善しない場合の原因には次のようなものが挙げられます。

1. 足白癬に対して使用した水虫薬の効果が足りない。
2. 足白癬に対して使用した水虫薬でかぶれてしまっている。
3. 足白癬に二次細菌感染を合併している。
4. そもそも足白癬でない症状に対して水虫薬を使用してしまった。
5. そもそも足白癬でない症状に対して使用した水虫薬でかぶれてしまった。

3の場合には患部からの滲出液が多く、腫れや痛みを伴うことで診断できます。また、この場合二次細菌感染の治療が優先されますので、それが改善されてから白癬菌を確認し、足白癬の治療を行っていきます。

ところが、1、2、4、5の区別は初めて来院された時には容易ではありません。すでに水虫薬を使用している状態では顕微鏡で白癬菌が見つけにくい状態になっていますので、水虫薬を使用する前の状態が足白癬であったのか、他の病気であったのか判断が付かないのです。したがってこのような場合には、水虫薬の使用を止めていただき、まずはかぶれなどの治療を行います。その後、様子を見せていただく時に白癬菌の検査を行い、白癬菌が確認できたら水虫薬による治療を開始することになります。

このように、きちんと診断しないまま水虫薬を使用してこじれてしまうと、治療をやり直すのに時間も労力も浪費します。「水虫になってしまったかも…」という時には、きちんと皮膚科を受診して検査してもらうことをお勧めします。

水虫と間違われやすい病気

足に水疱ができたり、皮膚がカサカサと剥けたりする異汗性湿疹(汗疱)や、膿疱(小さな膿のたまり)がたくさんできてくる掌蹠膿疱症、冬の空気の乾燥によるカカトのひび割れ、間違った塗り薬を使用したことによる接触皮膚炎(かぶれ)など、水虫と症状が似ていて区別しなければいけない病気があります。

異汗性湿疹(汗疱)

手の平や足の裏、指の側面などに生じる湿疹で、症状としては小さな水疱がたくさんできてきて、かゆみを伴います。小水疱型の水虫と似た症状です。

掌蹠膿疱症

手の平と足の裏に膿疱(小さな膿のたまり)が繰り返し出現する、慢性の皮膚疾患です。爪の変形を伴う場合もあり、小水疱型の水虫や爪白癬ににた症状がみられます。扁桃腺や歯科領域の細菌感染(虫歯や歯周病)、金属アレルギー(虫歯治療で使用する金属製充填物に対するアレルギー)などが原因となります。喫煙との関連も指摘されています。

カカトのひび割れ

人は立って生活しますので、長年体重を支え、圧迫を受けてきた足の裏の皮膚は角質層が分厚く肥厚した状態になります。分厚くなった角質層には体の中からの水分が行き渡らないので、潤いが無くなり、弾力を失います。特に冬場に空気が乾燥してくると、角質層の乾燥も進み、少しの外力でもひび割れを生じるようになります。このような状態は、角質増殖型の水虫と区別する必要があります。

接触皮膚炎(かぶれ)

水虫ではない症状に市販の水虫薬を使用して症状が悪化したり、水虫に対して使用した塗り薬でかぶれてしまうことがあります。塗り薬で症状が悪化していることに気が付かないと、早く治そうとしてさらにたくさん薬を使用して、患部からはみ出た薬によってさらにかぶれの範囲が広がり、症状は悪化します。
水虫を治そうとお酢に足を浸けて、ひどくかぶれて来院される方もあります。
塗り薬を使用してかゆみが増したり、症状が悪化する時には、ただちにその薬の使用を中止して皮膚科を受診しましょう。

薬を使った治療

薬の使い方

水虫の治療には、抗真菌薬というカビを殺す薬剤の塗り薬を使用します。水虫は治りにくいと言われますが、次のことに注意して正しく塗り薬を使用すれば必ず良くなります。

足全体に薬を塗る

かゆい所やブツブツになっている所だけに塗るのでは十分ではありません。一見症状がない場所であっても、水虫菌が潜んでいる可能性はあります。足の裏側と側面、指の股など水虫の症状が出やすい場所には、塗り残しがないように丁寧に薬を塗ります。


症状が無くなってもしばらく薬は塗り続ける

かゆみやブツブツが無くなっても、白癬菌が完全に排除されたわけではありません。白癬菌の数が少なくなると水虫の症状はおさまってしまいますが、そこで塗るのをやめてしまうと次の夏にまた再発することがあります。そうならないためには、症状が無くなってからもしばらく(1か月以上)は薬を塗り続ける必要があります。
薬を塗る期間は通常の足白癬で3か月以上、角質増殖型では6か月以上が目安です。

薬の効き目が良くない場合

水虫という診断を受けて、塗り薬を続けているのに症状が良くならない場合には、次のような可能性が考えられます。

1. 使用している塗り薬の効果が足りない
2. 薬を塗る量が少なすぎる
3. 日常生活での注意事項が守られていない
4. 他の皮膚疾患を合併している
5. 爪白癬を合併している
白癬菌にはいくつかの種類のものが存在します。人によって水虫の原因になっている白癬菌の種類が異なりますので、ある抗真菌薬がその人にとっては有効であっても、他の人には効果が見られない場合もあります。しばらく使用してみて効果が足りなかった場合には、抗真菌薬の種類を変えてみるのも一つの方法です。

 

「1日1回、両方の足の裏と、指の股の部分に塗り残しがないように、よく伸ばして薬を付けてください。」という説明をして10g入りのチューブを1本お渡しした場合に、ある人は1週間で使い切ってしまい、またある人は1か月以上経過してもまだ薬が残っていることがあります。足の大きさがそんなに極端に違うわけはありませんので、同じ説明を聞いていても、人によって薬の使用量がずいぶんと違うわけです。薬の使用量を正確にお伝えするのは難しいのですが、上記のような使用方法であれば10g入りのチューブ1本は約2週間で使い切る分量です。それが1か月以上足りてしまうとなると薬の使用量が少なすぎると判断します。
いくら塗り薬をきちんと使用していても、下記のような日常生活での注意事項が守られていなければ、症状が改善しない場合もあります。

 

水虫に他の皮膚疾患が合併している場合もあります。異汗性湿疹が合併している場合、治療によって白癬菌が退治できていても、異汗性湿疹による水虫と似た症状が残ってしまいます。また、アトピー性皮膚炎では靴の中で蒸れるため足の湿疹ができやすい傾向がありますが、それに水虫を合併している場合、水虫の治療を行っても湿疹の症状が残ってしまいます。

 

抗真菌薬の塗り薬は爪の中まで十分に浸透しないので、爪白癬に対しては十分な効果がありません。爪白癬を合併していると、足白癬の治療を終了するとすぐに症状が再発してくる場合があります。

場合によっては飲み薬という手も…

きちんと塗り薬を使用しているのに症状が改善しない場合や、日常生活が忙しくてどうしてもきちんと薬を塗ることができない場合、症状の再発を繰り返している場合、などでは抗真菌薬の飲み薬を使用する場合もあります。詳しくは皮膚科専門医にご相談ください。

普段の生活で気をつけること

足を乾燥させる

皮靴や長靴、パンプス、ブーツなどは通気性が悪く湿気がたまりやすいので、白癬菌が繁殖してしまいます。靴を長時間履き続けないように、可能であればオフィス内ではサンダルを履くと良いでしょう。1日履いた靴は汗で湿った状態になりますので、よく乾燥させてから次に履くようにします。靴を履く時間が長い人は、5本指の木綿製の靴下を履くか、足の指の間にガーゼを挟むようにしましょう。汗っかきの人は仕事の合間などに靴下を履き替えた方がよいでしょう。
 
足の清潔に気をつける

どんなに疲れて帰宅しても、必ず毎日足を丁寧に洗いましょう。水虫の予防と、すでに水虫になってしまった人も二次細菌感染の予防になります。ただしゴシゴシ洗いは皮膚を傷つけてしまうので、塗り薬でかぶれやすくなったり、二次細菌感染を生じやすくなったりして逆効果です。石鹸をよく泡立てて優しく洗いましょう。
プールや公衆浴場の床や足拭きマットにはたくさんの白癬菌が付着しています。足に付着した白癬菌はその日のうちに洗い落とす必要がありますので、そのような場所で足拭きマットを使用した後で、もう一度自分のタオルで足を拭くようにしましょう。
 
家族への感染予防

湿気の多い浴室周辺を中心に、よく掃除機をかけるようにします。足拭きマットは水虫のある人と無い人とで分けて使い、使用後はよく乾燥させましょう。靴下などの布類に付着した白癬菌は自然乾燥では殺菌できませんが、乾燥機やアイロンなどで高温にすると殺菌効果があります。すでに家族内に水虫の人がいる場合には、その家族も一緒に治療を受ける必要があります。

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